絶望の淵

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1985年3月18日 08:15 イラン.テヘラン メヘラーバード国際空港 「一体どういうことですか!?」 周章と迫り来る恐怖が空港内部の人々を圧迫する中、1人の日本人の声が轟いた。 「何故です!?既に18日を迎えてるんですよ!?これ以上遅れては飛行機がイランに到着する前にタイムリミットを迎えてしまうではないですか!」 国際電話に向かってそう叫ぶ彼の表情からは、一抹の余裕も窺えない。 それだけで事態は緊迫していることが把握できる。 「無理です!他国の航空機へ幾度もお願いしましたが、どこもそんな余裕は無いと承諾してくれません!……イラク軍の空爆は激しさを増す一方です!今も至るところに爆弾が落ちてます!このままでは200名以上が戦場のど真ん中に置き去りになり、いずれ死者が出てしまいます!」 空襲警報が鳴り止まない空港内で、在イラク大使館職員は受話器を耳から離し、頭を抱えてその場に座り込んだ。
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