頼みの綱

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フセインの無差別攻撃宣言より約12時間後。 『頼む! 助けてやってくれ!』  伊藤忠商事のトルコ.イスタンブール事務所長.森永堯(たかし)氏の電話が突然鳴り響いた。 日本の本社からだ。 電話の向こう側の人間の焦燥した声が響いた。 『イラクのサダム・フセイン大統領が、「1985年3月19日20時30分以降、イラン領空を通過する航空機は民間機といえども安全を保障しない」と警告を発した! イランにいる在留外国人は、祖国からの航空機に乗り込み出国しようとしている…… 在留邦人も脱出しようとしている人々が200名以上いるらしいが、乗せてくれる飛行機がないらしい! ついては在留邦人救出のために、トルコ航空に臨時便を飛ばしてもらうよう、トルコ政府へ貴方からお願いできないか!? 日本政府は自衛隊を出動させることもできないし、国内の民間航空会社もイラン・イラク両国の上空での安全が確約されない限りは臨時便は出せないと言っているらしい! 取り残された邦人達は、直ぐ上からいつイラク軍機が襲ってくるかわからないような危険にさらされている! 頼む!助けてやってくれ!』 この年にはイラク空軍機はテヘランの民間居住域を空爆するまでになっていた。 日本人学校の先生宅の2軒隣にも爆弾が落ち、5人の死者が出ていたという。
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