頼みの綱

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「と、とりあえず……やるだけやってみましょう……」 電話を切った森永氏は、最後にそう返したものの不思議に思った。 ーー日本人がそんな危機に直面しているのに、何故日本の航空機が救出に来れないのか? 今起きている問題は、イランにいる日本人の問題なのだ。 すなわち当事国はイランと日本である。トルコは全く関係のない第三国であるのだ。それなのに何故トルコが巻き込まれるのか? 森永氏自身が疑問に思った事は、トルコ政府からかならず質問されるだろう。それにどう答えるのか。さらに彼らからは当然、 『テヘランには大勢のトルコ人が残されています。トルコ政府としてはまずはトルコ人を救出するべきで、その対策で一杯一杯です。 外国人である日本人の救援にまで手が回らないのが実情です……それを把握された上でのご要請ですか?』 などと言われるに違いない。 トルコ政府に頼むにしても、こうした質問や言い分に、すぐに答えられるよう、説得力のある回答をあらかじめ用意しておかなければならない。 「これは……さすがに無理なんじゃ……」
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