始まりの合流地点

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「だからこそだ、そういう人間にこそ勉強は本当は必要なんだよ。それに家にずっと居る訳じゃ無いだろう」  自分のお茶を継ぎ足しながら、教師は自分の手を摩っていた。皺枯れた手の平はカサカサと音を立て人としての年季を感じた。 「まぁな、あんな家、今にでも出ていきたいんだよ」  神崎は、冷めた茶を半分ほど一気に飲むと湯呑をデスクの上に置いた。 「どうせ家なんて男なら出ていくんだ、学生生活なんて人生のほんの少しでしかない。生きてみればよく解る。まぁ勉強の方は今日ので解ったと思う、でだ、頑張ってみないか?」  教師は、そう言い”腹を割ったのだからお前も答えろ”目で訴えてきた。  老人にしてはやけに、輝き、鋭く、喧嘩をする時の人間の目に思えた。  沈黙は続いたが、やがて根負けしてしまい。 「わかったよ!どうせ一度退学にまで行きかけたんだ。ちょっと位はアンタに付き合ってやんよ」
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