28人が本棚に入れています
本棚に追加
/152ページ
部屋に入った途端、線香の香りに包まれる。入ってすぐ、正面には仏壇が飾られていた。
線香に火をつけた所で、追いついてきた男も隣に座り手を合わせる。
不謹慎だとは思ったが、次はいつ会えるのか解らない。故に、手を離したときに聞いて見た。
「お前は幸せだったのか?」
それを言いた瞬間、キョトンと目を合わせゆっくりと視線を落とす。
「そうだな、大変だったが。一人じゃ無かったしな。親父が家を売って此処に転がり込んでから、思い出は数えきれない程出来たよ」
「……………………そうか」
二人は目が合うと、子どもの悪戯をしたように何故かニヤリと笑いあった。
「それに、あの子に病気が遺伝されなかった事が、何よりの救いだよ」
最初のコメントを投稿しよう!