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……とは言え、いきなり自己紹介されても『便利屋』という単語に今一つピンとこない以上、二人の言葉が頭に入り難いのも仕方無いと言えば仕方無い話。
あとどうでもいい話だが、真澄は上司にタメ口を使っていいのか。
「え、えーと……海原さん?
そのー、馬鹿な質問かもですけど……便利屋って、何ですか?」
「別に難しく考える必要無ぇよ。
犬の散歩から浮気調査まで、街の人々のパシリを進んでやる職業とでも言っておくか。
ま……『表向きは』だがな」
便利屋……便利という単語に違うこと無く、聞いた限りでは京介の予想の範疇に収まるものだった。
何と無く真澄には不向きな職業に思えるのは気のせいだろう。
ただ、一言……最後の不吉な一言さえ聞かなければ、自分の疑問はすんなりと解消されたのだが。
「表向きって、その……」
「詳しく話す義理は無ぇな。
表があれば裏もある、事務所にはお前みたいな特殊な事情を抱えた奴も稀に来る、それだけだ」
「…………」
先程の疑問より遥かに重大そうなこちらの疑問が解消されることは叶わなかったが、実のところ内心ホッとした京介である。
好奇心として聞きたかったことは否定しないが、聞いてしまうことで恐怖まで生まれてしまうのなら知らない方がずっと良い。
京介はそう考える。
……が、それはそれとして、この疑問だけは解消しないままというわけにいかないだろう。
「……あの、結局僕達って何処に向かってるんですか……?」
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