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「もう着いたよ、ほら」
が、またしても疑問が解消されることは無かった。
正確には、質疑応答によって疑問を解消する必要が無くなった。
既に車は目的地の付近に来ていたようで、今まさにエンジンが駆動を止めたからだ。
慌てて窓の外に目を向ける京介。
そこにあるのは、マンションともビルとも受け取れる外装だけでは内装の想像に難い、八階建て程の高さの建造物。
時間帯も関係しているのだろうが妙な薄暗さが心臓に悪い。
「……ど、何処ですか?」
「外装だけただのビルっぽい賭場……違法カジノってやつね」
サラッと言ったが、明らかに聞き捨てならない発言をした真澄。
「…………はい?」
「カジノ、ちょっとヤバめの」
「かっ……かじのォッ!?」
再び驚愕の声が飛び出す。
果たして昨日今日だけで何度声を張り上げたことか。
まぁ当然なことではあるが。
カジノとは、本来なら日本に存在『出来ない』ものである。
何故なら法律によって禁止されているからだ。
にも関わらずそれが存在しているということは、それは紛れも無く違法であり、それに加えて今回は真澄曰く『ちょっとヤバめ』。
何をどう考えても、一般人である京介が踏み込める場所ではない。
「いやいやいや、何で!?
何でカジノに来たんですか!?」
「君は洋食店に入って蕎麦を注文する人間なの?
カジノに来る理由なんて、普通は誰でも分かる筈だけど」
その言い回しに不吉を感じ、京介の額から汗が一筋滑った。
「お金儲け、しか無いでしょ?」
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