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「 お前… 馬鹿にしているのか?」
何の感情も感じられない程の、冷たく冷静な声が耳に届く。
「 ハハハ… え~とッすねぇ、決してそんなつもりは無いんすけどね。なんて言ったらイイのか、タイミングが… ハハハ。」
本当なら、「お前がこのタイミングで来たのが悪いんだろコラ!文句言いてぇのはこっちの方だ!」とか、言ってやりたいんだが…
何だろうね。もうビビるにしても、チビる小便すら残っちゃいないし、何より余りに現実離れをしたこの状況に、俺の頭が付いていってないと言うのが正直な処。
「 フンッ!お前みたいな奴は初めてだ、まぁ面白い見せ物だったよ 」
淡々と続けられた女の言葉に、やはり温度は感じられず、先程からずっと壁に向かって両手を着いたままの俺には、どんな表情をして話しているのかさえ想像に難しかった。
…ただ。
「 1つだけイイっすか?」
「 …ん?何だ?」
「 あのォ~、あのですね。ムスコさんを仕舞わせてもらってもイイっすか?ハハハ…ハア。」
いい加減マジで寒い!
お陰さまで俺の自慢のムスコさんも、ロケットランチャーからハンドガン… 嫌、の弾丸-タマ-?位にまで縮み込んじまった。
( 可愛そうに… )
…すると
「 何だ?まだしまって無かったのか?どうりでイヤに"匂う"と思ったんだ。まぁどうせ有るのかどうかも解らん"粗末なもの"だ。そのままでも変わらんとは思うが、鼻も曲がる。しまってイイぞ?」
( … … ハイッ? 何だって?)
余りの事に、俺は自分の耳を疑うのと共に固まってしまった。
「 いや、もう冗談キツいっすね。え~と、イイんすよね?」
まさか?と思う気持ちもあり、再度念を押して確認する。
「 ああ、イイぞ?しかし、いくら粗末に小さかろうが、匂う奴は匂うものだな? 」
〈 ブチン! 〉
あ~神様仏様、さっきの店の雅様。
俺はもう駄目だ…
たった今、頭の中で変な音が聞こえて来ました。
そう、あれっス。
キレました。もうキレちゃいました俺。
…ので、今日。
今宵今晩この一時に、俺は初めて人を殺めてしまうかも知れません…
母さん、父さん。さっきの店の雅♪様… どうか罪深き俺をお許しください。
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