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…これは事件だ。
「 こんのヤローッ!! テメェ~コラッ!"冬季-フユキ-" ーッ!!何処行きやがったぁーッ!!!」
《 ドタバタッ!ドタバタッ…! 》
閉ざされた扉一枚を隔てた先で、聞き慣れた女の声が、罵声となって響き渡る。
…そう。もう一度言おう。
これは事件だ。
何故なら。彼女が半狂乱で叫び探している"冬季"という男は、何を隠そうこの俺の事だからだ…
( …クソ。 )
今此処で下手を打てば、間違いなく俺は彼女の手によって、人知れず樹海の土とされたあと、長い年月を掛ながら、徐々に生い茂る木々たちの肥料となってしまう事だろう。
( …間違いない )
《 …ブルブルッ!! 》
何とも形容しがたい恐怖からなのか、身体が小刻みに震えた。
だが… まぁ待て。
取り敢えず、今。
この俺の置かれている危機的状況を打破しよう。
考えるのはそれからだ!!
「 ふんっ!!」
瞬時、俺は瞼を閉じて気合いを入れた。
…そして
( グッ!…よし。そうだ。
ウグッ! ンガ、もう少し…
もう少しだ… し、集中しろ。)
!?
《 ビクッ!?》
「 ンガッ!」
なン…ッ! …な!?
なッ、なんだとーッ!?
何だ… 何なんだこの感覚は?
ン、まるでそう。
俺の中のあらゆる憑きモノが、滞りなく全て洗い流されて行くかのような背徳と快感。
否!!
そんな生易しいモノじゃない!
これはそう。
あの聖母マリアの与えたもう、絶え間ない愛による最良の安堵か!?
こんな生と死を別つような壮絶な狭間の中、俺の身体を惜しげもなく支配する快楽。
今、時は満ちた!
《 ブリッ! ブッ!! ブリブリブリッッ!! 》
( あっ… ああ~アアア!!!
も、もぉ~、もォ~!!!)
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