キス事情

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人は時に只ならぬ好奇心に襲われる時がある。 「……」 僕はどちらかというと好奇心という突発的な感情は薄いほうだと思っていたが、その衝動は突然襲ってくるらしい。 珍しく生徒会長の席で居眠りをしている渚を見下ろす。 普段なら隣りの仮眠室で休むのにどうしたのでしょうか?突然の眠気に落ちちゃったのでしょうか? あまり頭で考えずに僕の手が渚の髪へと伸びた。 この手触りが良いのかどうなのかはよく分からないけど、自分のとは確かに違っている。 人の髪を触るという行為は案外楽しいのかもしれない。 起きる気配の無い渚の髪を弄ぶ事に暫くの間夢中になっていると、寝ていてもやはり気になるのか渚が身じろぎ横顔が見えた。 「……無害そうな顔」 まだ見慣れない寝顔がそこにあった。 目許にかかる前髪を指でよけて何となく眺めていると、ちょとした思いが湧き上がる。 今なら自分から出来そう……かも。 付き合ったとしても、好きだとしても性格上こちらから仕掛ける事など出来無かった。完全に受け身な自分を仕方無いと諦めていた部分も多かったので、今埋められている気持ちは全く感じたことのない不思議な感覚だった。
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