勝負のその後

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嫌な2つの声に振り返る。 黄色と水色、お揃いのワンピースが全力疾走でこちらに向かって来ていた。 げっ 避けようとする暇もなく2人分の衝撃を受けた。勢いを殺すこと無く抱きついてきた2人の頭が思い切り腹に入り少しよろける。怜は2、3歩下がったようだった。 「茉子が一番だった!」 「莉子だった!莉子が一番だった!!」 「茉子だよ!」 「莉子だよ!」 こんな所で言い合いを始める2人に俺達は何故か蚊帳の外にいる気分を味あわされている。突如現れた小さな女の子2人に怜はもっと状況把握が追い付かないらしい。 目が合う。 「えっと、これ妹たち。おい、お前ら名前覚えてもらえ」 ほい、と怜の前に黄色と水色を突き出す。 「一条茉子、10歳です。ピアノが好きです」 「一条莉子、10歳です。お琴弾きます」 「「お兄ちゃん、だあれ?」」 まこちゃんとりこちゃん?と呟いていた怜に2人の好奇心に溢れる視線が突き刺さった。じぃーっと怜を観察している我が妹たち。 怜が静かに膝を折り、妹たちと視線を合わせた。 「僕は鈴城怜です。今日から少しお世話になります。よろしくお願いしますね」
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