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確かに、と浮かんで「今も得意じゃない」と無意識に口に出せば汐音がキラキラした(いや、ギラギラした)目で俺と怜に視線を順番に移す。
「怜さんのどこが良いんですか?」
完全に調子に乗った汐音はリポーター気取りでエア・マイクを俺の口許に向けてくる。
流れに乗って危なく答えそうになってしまった口をしっかりと閉じて、汐音の頭を軽く引っ叩く。大袈裟に喚くが無視だ。
「……お前は怜と喋るの禁止」
「ぇえ゛!?」
女とは思えない声を出す汐音にもう用は無く、来て早々双子の相手をしている怜に近付く。
「珈琲淹れるけど、怜は紅茶で良い?」
サラッと髪に指をと透せば座っていた怜が瞳で見上げてくる。嫌がる様子は無い。
「あ、僕も手伝います」
ちょっと強引な口調、離れない視線。この知らない空間で置き去りは少し心細いようだ。
底知れず優越感と擁護欲の混ざるような気持ちにさせられて、怜の求める腕を伸ばした。
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