勝負のその後

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その何とも居心地の悪い視線から逃げるように渚が示した食器棚へと向かう。 だいたい何で渚の家まできて珈琲を淹れなきゃいけないんでしょうか?というか本当に31日まで此処で過ごすんですかね?……流石に渚の親と一回くらい会ってしまいますよね……何て言えばいいですか!?もう既に帰りたいんですけど! いきなり黒い影が覆い被さる。後ろを振り返らなくても分かる。渚が腕を食器棚について僕を囲っている。 「……邪魔なんですけど」 「お前なんでそんなに緊張してるわけ?こんなに緊張してんのも珍しくね?」 思った以上に近くで聞こえる渚の声に一瞬呼吸が止まった。渚の気配が近過ぎて何一つ自分の意識で動かせない。 「だって、それは…」 「それは?」 続きを促すような声はそれでいて途轍もなく優しく響いた。この状況でそんな声はずるい。 「だから………あの」 「ん?」 渚がただ僕をからかって面白がっているだけだと分かってはいる。だけど、この安心を誘うような柔らかな声が僕の言葉を知らぬ間に引き出してしまうのだ。 「………だって渚の家だから」
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