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その声と同時に触れていた渚の空気が遠のいた。寸止めとなったキスに只ならぬ焦燥感とじらされた感覚のような熱が身体の中にこもる。
「…どうしたお前ら」
なんとも無いような渚の声。僕は顔を上げられるような状態ではない。
「遅いから呼びに来たの」
「そうよ。お兄様ばかり独り占めは、ずるいわ」
「茉子たちも怜ちゃんと遊びたいわ」
「そうよ!」
テンポの良い茉子ちゃんと莉子ちゃんのやり取りの後に渚の溜め息が聞こえる。
「…分かった。怜、後は俺がやるからお前はリビング戻ってろ」
「え」
思わず顔を上げようとすると渚と目が合う前に息のあった2人に両腕を捕まれ連れ出すように引っ張られる。
「ちょっと、あの僕はお手伝いが」
「「いいのっ!後はお兄様に任せましょう?」」
「怜ちゃん茉子と莉子の宿題見て?」
「それは名案だわ!算数教えて!」
強引に僕を引っ張る2人の言葉が次から次へと流れてきて、吐き出すような渚の言葉を僕が拾うことは出来なかった。
「……頭冷やさねぇと…」
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