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「怜ストップ」
当たり前のようにぴたりと足が止まってしまった事に腹立たしく感じながらも、仕方なく振り返る。
12月下旬の帰省のため生徒達でごった返したエントランスホールを抜けたロータリーで突き刺さる視線の中、従順のように命令らしき言葉に従わなければいけないのは苦痛でしか無かった。
「……会長。まだいらっしゃったのですね。姿が見えなかったので先に帰られたのかと」
「そんな御託はいい」
生徒会長に向けた副会長の言葉はお気に召さないようだ。
何だか外野が集まっているように感じるが、この人はこの中で話しを続けるつもりなんでしょうか?
「まさかお前がこんな人の混み合う時間帯を選んで帰るとは思わなかった」
まるで俺から逃げてるみたいだな。と続けた渚の言葉に表情が変わらないように気を張る。
「逃げてなんていませんよ。ただ帰るだけです」
話しを切り上げるタイミングを窺ってはいるが渚相手だとそんな隙は無い。こんな所にも主導権の所有者がハッキリと見えてしまって睨み付けたくなる気持ちをグッと抑えた。
「なら良いけど。まぁ、まさか期末考査で俺にボロ負けしたにも関わらず、約束無視して帰るなんて怜に限ってねぇよな?」
ここで渚を叩いて無いのは一般生徒が遠巻きに見ているからだ。だから渚はざわざ今言うのだろうか。
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