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少し自分を落ち着けようと冷たく澄んでいる空気を深く肺に入れる。
「あの、少し良いですか?」
「ん、なに?」
渚の視線は変わらず4人に向いていて声質も変化しなかったので、僕も変わらず喋れているようだ。自分で震えているように感じるのは思い込んで緊張を煽るだけだと、また一つ呼吸をした。
「渚の家に来れて良かったです。凄い緊張はしましたけど、家族は温かくって…この中で渚が育ってきたんだなって思ったら、なんか不思議な感じなんですけど、渚の小さい頃まで見ることが出来た気がして」
こんな変な事を言ってしまって渚と目なんか合わせられる訳もなく逃げ場は大はしゃぎな4人に置かせてもらっている。
「渚の知らない面たくさん見ることが出来て嬉しかったです」
あと、と言葉を切って視線を下に下げる。雪しか見えなくなるがそれだけでは変なことを口走ろうとする頭を冷却してはくれなかった。
「……僕も一番は渚です。副会長はそれを示すしきたりとか無いので、言葉だけですみません。 どこが好きだからとかいまいち言葉に出来ないんですけど」
鳴り響く鼓動を無意味に必死に抑えて渚に視線を向けると、こちらが堪らなく恥ずかしくなるような顔で笑った。ひどく嬉しそうな表情は僕の熱を簡単に上げるから困る。
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