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「あ、でもさ成瀬を好きな期間の方が長かっただろ?それでも俺なのか?」
「…長さじゃなくて気持ちの問題ですよね?ならギリギリ渚が一番ですよ」
渚がこの期に及んでも意地の悪い事を言うものだから僕も甘い言葉だけでは返さなかった。
「俺はダントツで怜なのにな」
そんな罠みたいな声と笑みからは目を逸らして逃げる。
「…それは嬉しいですけど……僕はこれからも渚じゃなきゃダメだなとか思っているので良いじゃないですか別に。ギリギリでも一番、すき…ですよ?あの…昨日言えなかったので…」
もっと素直に言う筈だったのにどこか曲がってしまった不格好な告白。我慢できない程の羞恥心に見舞われて俯く。
「キスしたくなった」
「場所を考えてください!」
「だから、ちょっと探検しに行くか?」
渚は立ち上がった。今このタイミングで差し出される渚の手を取ってしまう僕は渚と同じくらいバカなんだろうか。
「でもキスはしませんよ」
「まぁ、言うだけ言っとけ」
「…最悪です」
最悪なくらいこの人に嵌まっていて抜け出せなくて抜け出そうとも思えなくて、怖いくらい好きなのだ。こんな人、後にも先にも渚だけと言い切っても良い。
恋愛に夢みていた僕をあっと言う間に呑み込んだ渚は最悪な最愛の人だ。
-fin-
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