いちゃこら?

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空気感だったり匂いだったり図書館という所は学園の中でも特に独特だ。 国内でも指折りの書蔵庫と言われているこの図書館だからかさらに重々しい空気が加わっているような気がした。どっしりと佇んで並んでいる書棚もそこに整頓され収納してある書物もどこか静止画のように現実味がないように感じる。 蔵書冊数を誇るこの図書館で僕たちのクラスは授業として文献研究を行っている最中である。 綺麗に並んだ背表紙に1つ1つ目を通しながらゆっくりと足を進める。暫く続けると気になる文が目に留まり手を伸ばすが、それが僕の手元に渡る事は無かった。 「お前の班は北欧?」 勝手にペラペラと中身を見ている男を睨みつけ本を奪い取る。 意外と簡単に手放した所を見ると僕の行動を先読みしていたように感じ腹立たしくなる。 「会長…」 「この辺誰もいないから名前で呼べ」 興味無さそうに図書を漁る渚の声に軽く周りを確認してまた渚に温かいとは言えない視線を向ける。 「……渚はこっちに用は無い筈ですよ?自分の班に戻って真面目に勉強して下さい」 言葉の後半はもう書棚へと視線を移して、意識は課題に使えそうな書物探しに向いていた。渚に構っている暇は無いと態度で示す。 「…真面目に、ねぇ。」 そんな馬鹿にしたような声質で言葉を吐いた後、今度は後ろから僕が手に取ろうとしていた本を横取りされた。 本を追って後ろを向くと愉しそうに笑っている渚と目が合う。 トンっと渚が書棚に手を着いた。 「…邪魔しないでください」 「何かこういう所で隠れてキスするのとか興奮するよな」 「っ……馬鹿じゃないですか!?渚だけですよ!そんなこ」 慣れたように僕の口を渚の手が覆う。
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