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帰ろうとベッドから離れようとすれば、伸びてきた手に引っ張られ再びベッドの中。
抵抗する僕を押さえ込む力は病人だと到底思えない。
「…大人しくするなら離してやるよ」
「は!?」
嫌ですよ!と暴れる僕を物ともせず、渚は僕の耳元に口を寄せた。
「じゃあ、ずっとこのままだな。怜」
いつも以上に艶を感じる声に呼ばれて顔を向けてしまった。
「真っ赤…可愛いな」
頬を撫で顔を寄せてくる渚に慌てふためく。危険信号は頭の中に鳴り響きくが、肝心な思考は真っ白。
──ガツッ
「いッ」
額を押さえている渚の手から抜け出し、ベッドから距離を取り息を整える。
「職権乱用!!副会長の敵!!馬鹿!!……あ、ああ明日の会議ちゃんと出席してくださいね!」
バタンと寝室の扉を閉めて寄りかかる。出てきた言葉の子どもっぽさに情け無くなり溜め息をつきながら痛む額を押さえた。
どうして渚の前だと偶に余裕が無くなってしまうのだろうか?
-fin-
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