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渚の頬に自分の指を突き刺してみる。これで起きなかったら実行すると決めていたこと。
「……無防備ですね」
渚の閉じている瞼を手で覆い隠し、唇の端に自分の唇を寄せた。柔らかな感覚と自分の行動に後ろめたさもあったが、変な達成感と優越感の方が随分と大きかった。
渚が寝ている間に仕事を一つでも終わらせようと呑気に考えながら唇を離そうとした瞬間、後頭部を何かに押さえつけられる。
「ッ!?ん、っ……ちょ、ンっ……、…ッ」
驚きの言葉を口にしようとすると口内に入り込んできたモノに翻弄されて逃げられない。
僕の手が外され寝起きとは思えないその瞳と交わった。優位に立った男は抵抗が無くなった僕に満足したのか深い行為を重ね、たっぷりと時間を掛けてから離した。
机に手を着いて、身体を支えているその僕の手が震えている。
「随分とベタなことしてくれたじゃねぇか」
「……だ、騙しましたね」
睨み付ければ気分良さそうに笑い、僕のネクタイを引き抜いた。
「仕事する気無くなった。どう責任取ってくれんだ?」
色付いた瞳にあてられる。振りほどこうとする脳からの命令は遅くて話しにならなかった。
「…責任なんて取りません」
あっそ。って笑った渚がまた当たり前のように近づいてくる。
-fin-
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