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制服の上に白衣を着た謎の下級生を送り届け、教室に戻った達也を待っていたのは腕組みをする担任教師だった。
道中なにもなければ、長く見積もっても十分で往復できる距離だったにもかかわらず、ホームルームはゆうに半分を越し、気の早い生徒は帰り支度を始めているほどだ。
そんな状況で、下手に嘘をつくよりは事実をありのまま話した方が自分への被害が少ないだろうと判断した達也は、遅くなった理由を元凶であるあの驚くほどの方向音痴に全て押し付ける形で担任に伝えた。
白衣を着ていただとか、帰り道で同じ場所に立っていただとか、いくつか担任教師は達也が嘘をついているんじゃないかと疑う場面があり、そのたびに達也は慌てたが、なんとか納得させることはできた。
これで白衣の少女との関係が終わったと思ってしまったことと、事細かく少女の特徴を話してしまったのは、達也にとって大きなミスだった。
翌日、達也は職員室で膝から崩れ落ち、勢いをそのままに四つん這いになり、全身から不幸オーラをまとっていた。
「なんですか、服従のポーズですか? これだけの人の前で大胆ですね。その心意気は認めてあげますけど、気持ち悪いのでやめてください」
「おまえが余計な注釈入れなきゃ、普通に落ち込んでるようにしか見えなかったはずだよね!?」
「いいえ。この職員室にいる人全員がわたしと同じ感想を持ったに違いありません」
「とりあえず先生方に謝ろうか?」
昨日の今日で再び白衣の少女と関わりを持つことになってしまった達也に余裕はない。四つん這いで見下されている状態を何とも思わない程度には。
放課後、達也は身支度をしているところを放送で呼び出された。
部活をしておらず、基本的に素行に問題のない彼には、心当たりがなかった。
それは、とある少女のことを思い出したくないがため記憶のすみに追いやっていたことが原因であり、一種の現実逃避から覚めてみればこのありさまだ。
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