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厄介ごとに巻き込まれたこと理解し、打ちひしがれる達也。
だが二人のやり取りを見て、おもしろいおもしろいとニコニコ笑っている三十路一歩前の女性教師。
何を勘違いしたのか、達也に追い打ちをかけるような、少女を不愉快にさせるような一言を放つ。
「君たち、仲良いね」
「仲良くないッス!」
「仲良くないです!」
不運にもシンクロしてしまった二人はお互いを睨み付け、すぐにそっぽを向いてしまった。
直後、一人は不機嫌に白衣のポケットに手を突っ込み、もう一人は立ち上がって膝のホコリを払う。そんな統一感のない二人に妙なまとまりを感じてしまった女性教師はくすくすと笑う。
「じゃあ君、この子のことよろしく頼むからね?」
「はい?」
達也にこの毒舌系白衣少女をよろしく頼まれる理由はない。昨日教室まで案内した、時間にして三十分も満たない関係で、全てを請け負わせるような口ぶりをされるのは納得できない。
それに、何を頼まれるか分かりもしないうちから首を縦には振れない達也は、苦笑いをしてみる。
「嫌です。こんな欲望の塊みたいな人の世話になるなら、死んだ方がましです」
「今日、何限目に登校してきたんだっけ?」
「三限目ですけどなにか問題ありますか?」
「これで何を頼みたいかは分かってくれたよね?」
達也は、教師が白衣の正面にあった体を自分に向けた瞬間、斜め四十五度の美しいお辞儀をした。
「謹んでお断りします」
「君しかいないって、わかるよね?」
道案内。
達也が思いつくのはこれしかなかった。学校としても成績が悪いならまだしも、方向音痴が原因で留年はさせたくない。できる限りの対策は打ってみよう。そして行き着いた答えが荒木達也。
「わかりますけど、そいつも嫌がってるみたいですし、別におれじゃなくてもいいんじゃないっすか?」
「私にはそう見えないけど。まぁ、この子、クラスの子と話そうとしないから。君とは一応コミュニケーションできるみたいだし、適任かなって」
達也が少女に目を向けると、彼女は手を白衣に入れたまま、居心地悪そうに斜め下に目線を逃がした。
「じゃあ、そいつに友達ができるまでってことで」
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