友達はいた方がいいと思うんだが

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達也がモテたことなど一度もない。 容姿、普通。身長、普通。成績、普通。運動神経、普通。性格、まあまあ。 そんな達也であっても、彼女がいたことくらいあった。昨年の二学期の間、仲良くしていたクラスメイトに告白されたので、好きになるかもしれないと思ってとりあえず付き合ってみたが、結果は芳しくなかった。 誰か一人に好意を持たれることはあっても、モテるということは経験したことがない。バレンタインのチョコだって、女友達から義理で一つか二つもらえれば良いほうだ。 根本的に、達也にはモテる要素が欠けているのだ。静香を探そうとしたときもそうだったが、消極的なくせにクールでもスマートでもない。 積極的であれば情熱が感じられて良し。消極的であっても、効率的に物事を処理できれば、それもまた良しだ。 しかし達也にはそのどちらも備わっていない。唯一の救いは、達也自身が欠点を自覚していることだ。 それがどうした。 達也がモテないことには変わりない。荒木達也が自分の欠点を認識していたところで、達也は改善を試みないし、橋田修一が腕を組みながらにやけ顔を達也に向ける理由にはならないのだ。 だからこそ達也は混乱している。何かが警鐘を鳴らしている。 やべーよ、マジやべーよ。と。 そして橋田は遠慮しない。 「噂になってる上級生って、荒木だろ?」 「ち、ちげーよ?」 「いいや、荒木だ。始業式で白衣がどうだの言い訳してたし、三日前くらいに白衣を着た女の子と一緒に歩いてるのも見たぞ?」 もう言い逃れはできなかった。周囲に聞かれていないかを確認するべく全力で目を泳がせる達也だったが、杞憂に終わる。 それぞれが自分たちの会話に集中していて、野郎同士の会話にわざわざ耳を傾けている生徒なんていなかったのだから。 「当たりだよな?」 「そうだけど、彼氏じゃないし。あいつ、極度の方向音痴だから、おれが道案内してるだけだし。ナビだよ、ナビ」 「そうだったのか」 橋田が白い歯を見せてきれいな笑顔を作る。彼が親指でさした先には、達也が持った疑問の正体が立っていた。 「じゃあ、あっちの子はなんなんだ?」
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