友達はいた方がいいと思うんだが

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とても華やかな女子生徒。 目鼻立ちのはっきりした顔。薄く茶色に染められた髪は鳩尾くらいまで伸び、ゆるくパーマをかけているのか、全体的に優しいイメージを受ける。 しかし、立ち姿から受ける印象には凛としたものがあり、隙がなく、十中八九気の強い女だと思われるだろう。 一年生は赤。二年生は青。三年生は緑。 履いている上履きのラインの色から一年生であることを確認した達也だが、その女子生徒が制服に着られているという印象を全く持たなかった。 美少女と言うよりは、美人。その美人が達也に向かってほほ笑みかけている。一か月前の達也なら泣いて喜んだろうが、今は既視感のようなもののせいで上手く笑顔を作れないでいる。 「それで、あれは誰なんだ? まさか彼女か?」 「知らね。見たこともないし」 「でも、荒木達也先輩知ってますか、って聞かれたぞ?」 「マジで? ほんじゃ、まあ、行ってくるわ」 ファイティングポーズで激励してくる橋田を横目で見ながら、達也は初対面の美人にひきつった営業スマイルを見舞う。 「おれが荒木達也だけど、どうかした?」 近づくとさらに明らかになる美人。服の上からでもわかるくびれた腰に、自然と目が行ってしまう豊満な胸。ナイスグラマラス! と意味の分からないことを心の中で叫ぶ達也はそれでも、既視感を拭えないでいた。 「はじめまして。荒木先輩。『一年三組』の安藤美咲です」 早く会話を切り上げる方針が達也の中で固まった。 一年三組と言う単語が出てきた時点で、なにをどう考えても静香関係の話だからだ。 達也が静香と知り合いだとバレることは、あれだけ噂の白衣ちゃんの話題で盛り上がっている教室に薪をくべることになる。 「杉浦の話だろ? だったら放課後にしてくんないかな?」 「杉浦さんに聞かれるとまずいからわざわざ来たんです。そういう訳にはいきません」 なんとか追い返そうと適当な言い訳を考え始めようとした達也は、視界の右でひらりと動いた白い何かのせいで動きを止めた。 「わたしに聞かれるとまずい話ですか。とても興味があります。ねえ、先輩?」
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