友達はいた方がいいと思うんだが

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「それで、あの安藤美咲って子、なんなの?」 慣れてきてしまったのか蹴られても大した反応をしなくなってしまった達也は、最初から蹴ることに関しても罵声を浴びせることにもなんの躊躇もない静香に訝しげな目を向ける。 「クラスの人です」 「それは知ってる。なんだっておれに会いに来るわけ?」 面識がまったくないにもかかわらず、名前まで調べてから探しに来て、静香のことで達也に話があると言うのだから、ただなんとなく会いに来たなんてことはあるまい。 もっと言えば、荒木達也は学校の中でも特別有名な生徒ではない。名前を調べるのも簡単ではないだろうし、橋田のようにクラスメイトでなければどのクラスなのかも分からない。 ということは、橋田以外にも何人もの上級生に声をかけたと考えるべきだ。そこまでして会わなければならない理由なら、当の静香に心当たりがあっても不思議はない。 そこまで考えられる達也ではないが、どーせ杉浦がなんかやったんだろーな、程度には考えられた。とりあえず何か情報を得るための浅薄な質問に静香は目を細める。 「なんでしたっけ、あの人」 「安藤美咲な。同じクラスなのは杉浦だよね?」 「名前は初めて知りました。でも、嫌いです。とても嫌いです」 達也は、静香が声に抑揚を付けず、表情を動かさなかったことに若干の恐怖を覚えた。いつだって丁寧語を崩さない静香であるが、感情は表情で表に出す。 その彼女が無感動に思えるほど静かに嫌悪感を示した。一か月も杉浦静香と関わってきた達也が、これは本気で嫌いだなと気付くには十分すぎる材料だった。 「あの子となんかあったのか? 今までで一番不機嫌じゃん」 「先輩こそ、あの人となんの悪巧みをしてたんですか?」 「してねえし。マジで知らねえんだって。名前知ったのもさっきだし」 「そんなの、わたしの名前を一か月弱も知らなかった先輩が言うには、何の説得力もありません。イライラしてきたので蹴っていいですか?」 「うんやめて。わりとマジで」
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