友達はいた方がいいと思うんだが

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達也は、もたれたフェンスのしなりを使って背中を跳ねさせる。フェンスをカシャカシャ鳴らしてバカみたいに口を半開きにしている姿を見て、静香は顔をそらした。 「だってよー、いくら杉浦の口が悪くても、クラスにひとりくらい味方してくれるやつがいてもいいじゃん。おれがクラスメイトならごめんだけど、なんか悪者側に付くやつとかいそうだし。みんながみんな安藤サイドっつうか、良い者側? に付くのって私たちは良い子だから攻撃しないでねって言ってるみたいで、その団結力が気持ちわりー」 「あれですか。わたしがいじめられてるとでも言いたいんですか?」 静香は気持ち目を細めて達也を見るが、達也は虚空を見つめてカシャカシャやってるだけでそちらを見ようとはしない。 「べつにイジメじゃないとは思うけど。ちょっかい出してくんのはあの子だけな訳だし、単に彼女が色々とスペック高すぎでこえーだけなんじゃねーの。って話」 「あんなのどこが恐いんですか?」 「気が強くて、勉強ができて、美人。それだけで十分こえーのよ。おれにはそういう気持ちわかるぞ。ほら、おれ、弱者側じゃん?」 静香は何か言いたげに少し口を開けたがすぐにつぐんでしまい、肩の力も眉の端も落として残念そうに達也を罵る。 「そうですね。いつもわたしに踏まれて喜ぶほどの弱者ですね、先輩は」 「言い過ぎな。でもまあ、あの子がどれだけ強者だろうと悪いことしてることには変わんないじゃん。んでもって、全員が弱者側にいるのもおかしな話だし、それこそ他人を踏みつけるようなことしてるやつと仲良くしてるのもおかしいじゃん。とか思うワケよ」 達也はフェンスに背中で体重を預けるようにして大きく反動をつけて、トットッとフェンスから離れる。 「そうは言っても、おれは弱者側だし、一年三組の生徒でもないし、あの子の心情もわっかんないから、どーとも言えないけど」 「先輩……」 静香はなんだかやりきった感を出している達也の隣に立つ。 「そろそろ手、洗いに行きたいんですけど」 「まだ引きずってたの、それ!?」
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