友達はいた方がいいと思うんだが

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あの後、本当に手を洗いに行った静香を一年三組まで送り届けた達也は、いつの間にか残りわずかになっていた昼休み時間中に弁当を食べるべく、またかすかに傷ついた心を引っ提げて二年五組の教室に入った。 達也が教室に足を踏み入れ、二年五組の生徒がそれを確認すると、男子は一斉に立ち上がり、無言でフラフラと達也に詰め寄る。 「えっ、なに? なんかこわいよ!」 本能的に逃げることを選択し、ドアへ振り返るも数人の男子によって固められており、完全に退路は断たれてしまっていた。 顔をひきつらせる達也を尻目に、二年五組男子一同は手を前に突き出しながら移動しており、その姿はB級のゾンビ映画を彷彿とさせる。 じりじりと教室後方の壁際に追い詰められていく達也は、女子に救いの手を差し伸べてもらおうと懸命に目配せするが、目があった女子全員が口パクで「ごめんね」と心ない言葉で達也を見捨てた。 そうしている間にもゾンビ男子は距離を縮めていて、達也はついに背中を壁についてしまう。右、左、前の三方向から無数に見えるほど手が迫って来るホラー映画ファン垂涎の光景。半分涙目の達也は情けない声をあげた。 「ぼ、暴力反対! 話せばわかる! あとなんだ……待って、マジで待ってってぇぇぇぇえっ!!」 目を閉じ、頭を手で守るようにしてしゃがみこんだ達也だったが、一向に痛みはやってこず、代わりに体じゅういたるところをぺたぺたと触られている。 「なにっ? なんで触られてんの? ちょ、わき腹はやめっ、ケツ触んないで!?」 ぺたぺた、べたべた、ときにはねっとりと大勢の男子の手に触られること約二分。襲い掛かっていたゾンビたちは、正気を取り戻し、自分の席へと戻っていった。 一方、触られた達也はと言うと、ペタリと床にへたり込み、茫然と教室を眺めている。 「災難だったな、荒木」 「なんで触られたの、おれ? 橋田はなんか知ってる?」 「ああ、俺が首謀者だっ!」 「おまえだったのかよ!?」
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