友達はいた方がいいと思うんだが

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本日の弁当である、コンビニのメロンパンを一口食べた達也は、嫌に満足した表情の男子を見渡してから、橋田にジト目をくれてやる。しかし橋田は気にすることなく、あっはっはと笑う。 「荒木が噂の白衣ちゃんとどこかに消えた後、だいたいのところは俺が説明したんだが」 「だが?」 達也はクッキー生地がボロボロと机の上に散らばることも気にせず、大口を開けてメロンパンにかじりつく。もごもごと咀嚼する姿もどことなく不機嫌だ。 「世にも珍しい白衣の美少女と出会ったかと思うと、その繋がりでさらなる美少女を引き寄せた荒木の出会い運がすごいんじゃないかという話になってな」 「は?」 口のはしに付いていたパン屑がぽとりと落ちる。 「ほら、あるだろ。触ると幸福になるタイプのパワースポット。それになぞらえて、ご利益をもらおうと男子が荒木を触った訳だ」 「そういうことなら、ご利益っつーか、おれにとっての厄払いなんじゃね?」 「厄払い?」 達也は理由を言おうとして、すんでのところで踏みとどまった。 (あっぶねー。今度こそマジでボコられるとこだった) 白衣の美少女こと、杉浦静香は極度の方向音痴なうえに超が付くほどの毒舌だ。すこし目を離しただけで道をそれてしまうし、見失って発見するのが遅れれば、「犬なのに鼻が利かないんですか?」とでも罵られる始末。 そんな女子高生を誰がかわいいと思うのだろうか。 安藤美咲についても、引き寄せたというよりは、静香が『引き連れてきた』というほうがしっくりくるものがあるだろう。 それを出会い運だ、ご利益だと言われても、達也はイライラするだけなのだ。 しかし、周囲の男子生徒からしてみれば、そんなことは関係ない。方向音痴や毒舌というマイナスイメージよりも、『美少女』というプラスイメージが遥かに強い。 なにをどう言ったところで、「でもかわいいならいいじゃん」で片づけてしまうのが男子高校生。 だからこそ、言葉が堰を切る前に、理性が水門を開いた達也は歯を見せて笑う。 「いや、あるといいな、ご利益」
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