友達はいた方がいいと思うんだが

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放課後。 達也は、ホームルームが終わると挨拶もそこそこに、誰に気付かれるでもなく一年三組へと赴く。しかし、今日はいつもと様子が違った。 「おっ、噂の白衣ちゃん迎えに行くの?」 「ねえ、ホントに付き合ってないのー?」 「もう一人の子はなんだったんだ?」 「付き合ってないなら紹介してくれよー」 からかいや下心の言葉の雨に降られ、気まずい思いをした達也は愛想笑いでやり過ごして教室を出るが、廊下の方が精神的にくるものがあった。 「ほら、あれあれ」 「あれが噂の?」 「なんか普通じゃね?」 「誰か名前知ってる?」 どうやら、昼休みの一件で面が割れてしまったらしく、達也が廊下を歩けば、ひそひそこそこそ。容赦なく指をさされて公開処刑。何も悪いことをしていないのに、達也は顔を伏せ、背中を丸めて急ぎ足。 二年生のクラスが並ぶ廊下すぎると、ストレスでしかない状況はなくなり、達也は首を傾げるようにしてゴキゴキと鳴らしてから、ゆっくりとした足取りで一年三組へ向かう。 一年三組のホームルームは比較的に短い。 達也のクラスのホームルームが少し長引くと、達也が着いた頃には一年三組の教室はきちんと掃除が終えられているなんてこともしばしばだ。 そんな時、静香は決まって教室のすみで肩身が狭そうに立っている。出入りの邪魔にならないように、他の何も視界に入れないようにうつむいて。 それを知っていても達也は急がない。いいところを見せようなんて思わないし、なんなら静香のそんな行動を疎ましく思っているからだ。 (友達つくる気ないのに寂しがってんじゃねーよ、バカ) 普段、散々に言われている分、達也なりの小さな仕返しなのだ。 ちんたらと歩き、大きく欠伸をしながら一年三組近くの角を曲がって見えたのはいつもとは違う光景だった。 「なんなんですか、あなたは!」 「だから、ちょっと荒木先輩を貸してって言ってるだけじゃない!」 「先輩にはわたしと帰るという大事な仕事があるんです!」 「今日一日くらい、ひとりで帰ればいいでしょ!?」 トラブルメーカー二人が元気に口論していた。荒木達也をめぐって。
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