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止まらない涙を拭うのも忘れて
振り返り、ストーカー男の顔を見る。
「オレが千里に
『生きててよかった』って思わせたるから。
千里の命預けてくれへん?
ただ…
オレ…、死んでるけど。」
そう言い残して彼は消えた。
は?
??!
本当に『消えた』のだ。
音もなくスーっと。
手品とかイリュージョンとか、
そんなレベルではないことはわたしでも分かる。
「…なに?…」
驚きすぎて声にならないまま、
立ち尽くす。
何度見ても屋上にはわたし一人だ。
幻覚だったのか?
そう思ったのも束の間、
「これで信じてくれた?
ちなみにオレ、ストーカーちゃうから。」
さっきの明るい声が出口の方から聞こえる。
声のした方を恐る恐る見ると
出口のドアに
さっきの(自称ストーカーじゃない)男が
笑みを浮かべながらもたれ掛かっていた。
信じられない。______
こんなに明るいのに夢でも見ているのだろうか?
一体何が起こっているの??
お約束だけど、一応頬をつねってみる。
「…痛い。」
嘘…。
現実だとしたら…
これが俗に言う…
………幽霊。
頬を本気でつねっているわたしをおかしそうに
見ながら
「とりあえず、部屋入ろって。
千里風邪ひくで。」
とわたしに声をかけてくるその男。
そう言われたら
なんだか背中がゾクゾクしてくる。
どうせ死ぬのだから、と
上着を着て来なかったせいだろう。
「…寒い…」
わたしの口から自然とその言葉が漏れる。
「な?早く部屋行こ。
302号室。」
いたずらっ子のような笑みを浮かべて
(自称ストーカーじゃない幽霊?)男はわたしを屋上から追い出した。
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