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幽霊男の名前は『サトル』と、いうらしい。
歳は(というか、死んでしまった歳?)30歳。
天国?のどういうシステムかわからないけれど、
とにかくサトルは
愛する人を残して先に死んでしまったことが未練で、成仏できない。
成仏するには、地上で、自ら命を断とうとしている人を10人救い、幸せな道へ導くことが条件。
…らしい。
そして、わたしがその『10人目』なのだと、サトルは言う。
わたしのソファに寝転がって(いるように見えるけど、実は浮いているだけ?)
サトルは退屈そうにわたしに説明してくれる。
「どうしてわたしなの?」
わたしはまだ信じきれていないけれど、サトルに問いかける。
「オレが千里を幸せな道に導けるから。」
答えのようで、答えじゃないことをサトルは言った。
「どーせ、死ぬつもりやってんから。
いーやん。
死ぬ前にオレに付き合ってよ?」
サトルは優しく笑って言った。
わたしはサトルの言葉を繰り返した。
「どうせ、死ぬつもりだった…
…そうね…、アナタに付き合ってあげる。
幸せになれそうになかったら
改めて死ぬことにする。」
もうこうなったら開き直りだ。
「いーねー。そうこないと。
そーやなぁー…
桜が咲く頃までには千里の人生変えたるわ。」
あの独特な関西弁でサトルは自信たっぷりに言う。
こうして、わたしはサトルに命を預けてみることを決めたのだ。____
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