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「ねぇ。凛ってさ、やっぱり好きな人とかいるの?」 放課後。 教室を出て夕陽が差し込む廊下を歩いていたら、隣の結菜が突拍子もなくそんな風に聞いてきた。 凛とは、私のこと。 倉町凛音(クラマチリンネ)──結菜や友達には、いつも凛って呼ばれている。 「……好きな人」 ドクン。 その言葉に──私の胸の鼓動が大きく波を打つ。 「……ど、どうして?」 聞き返してしまった。 「ふと聞きたくなっただけ。ほらさ、あたし達も高校二年生だしー、好きな人といろいろ経験したいとか思うでしょ?」 「い、いろいろって……?」 「うーん、そうね」 結菜は唇に人差し指を重ねてながら悪戯っぽく、 「例えばぁ、キスしたいとかエッチしたいとか!」 「き、キス!? えええ、エッチ!?」 ボッと顔を赤く染めてしまう。 どうして結菜は、いつも大胆な発言ができるの……。 「したいでしょ? 凛も。それとも男に興味ないとか?」 「そ、それは……」 私だって映画やドラマでそういうシーンを見ると、やっぱりうらやましいとか思ってしまう。 興味がない──と言えば嘘になるかもしれない。 「伊波君としたい?」 「……えっ?」 またまた悪戯っぽく笑う結菜。 彼の名前が出たことに、私はひどく反応してしまった。
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