188人が本棚に入れています
本棚に追加
「……伊波、くん?」
私を呼び止める彼の声に、ドクンと心臓の鼓動を感じる。
どうして伊波君がこんなところに……?
「や、やっと見つけた。捜したよ、倉町」
伊波君はカバンを持たず、制服の姿で駆け寄ってきた。
ずっと走り回っていたのか、呼吸を乱し髪と制服が汗で濡れている。
「い、伊波君。い、急いでなにかあったの?」
私が心配して尋ねると伊波君はスーっと息を整えて、
「お守り──これ、倉町のものだろ?」
「あ」
それは私の大切にしている、"縁結びのお守り"だった。
「落ちてたんだよ。さっき倉町を受け止めたあの場所に。お前がそのお守り持ってたの知ってたから、きっとそうだろうって」
伊波君が、私のお守りのことを知っていた。
そっか。前から知ってくれていたんだ。
思わず顔が緩む。
あ、でも。
じゃあ伊波君は、お守りを私に返すために、わざわざ学校から走って追い掛けてきてくれたのかな。
次の日にでも返せば済むことなのに?
「このお守り、倉町にとって大切なものなんだよな。だからどうしても今日中に渡したくて追い掛けてきた」
「……伊波君」
ああ、やっぱりそう。
私──あの日から伊波君のこと、大好きだったんだ。
最初のコメントを投稿しよう!