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「……伊波、くん?」 私を呼び止める彼の声に、ドクンと心臓の鼓動を感じる。 どうして伊波君がこんなところに……? 「や、やっと見つけた。捜したよ、倉町」 伊波君はカバンを持たず、制服の姿で駆け寄ってきた。 ずっと走り回っていたのか、呼吸を乱し髪と制服が汗で濡れている。 「い、伊波君。い、急いでなにかあったの?」 私が心配して尋ねると伊波君はスーっと息を整えて、 「お守り──これ、倉町のものだろ?」 「あ」 それは私の大切にしている、"縁結びのお守り"だった。 「落ちてたんだよ。さっき倉町を受け止めたあの場所に。お前がそのお守り持ってたの知ってたから、きっとそうだろうって」 伊波君が、私のお守りのことを知っていた。 そっか。前から知ってくれていたんだ。 思わず顔が緩む。 あ、でも。 じゃあ伊波君は、お守りを私に返すために、わざわざ学校から走って追い掛けてきてくれたのかな。 次の日にでも返せば済むことなのに? 「このお守り、倉町にとって大切なものなんだよな。だからどうしても今日中に渡したくて追い掛けてきた」 「……伊波君」 ああ、やっぱりそう。 私──あの日から伊波君のこと、大好きだったんだ。
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