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伊波君は、私と瞳が重なると、視線を横に逸らした。 ……私の、気になってる人。 それは伊波君です。 なんて、やっぱり恥ずかしくてとても言えない。 でも、伊波君がどういう気持ちで聞いてきたのかわからないけど、その質問にはちゃんと答えてあげたい。 「う、うん、いる」 「そっか」 伊波君は小さく呟くだけで、それ以上なにも聞いてこなかった。 「じゃあ俺、サッカー部の練習に行くから」 「えっ……う、うん。わかった」 伊波君が私に背中を向ける。 そして、ゆっくりと足を前へと進めていく。 言わなきゃ。 ここで伊波君にお礼を言わなきゃ、また同じことを繰り返すだけになる。 「伊波君!」 「……倉町?」 私の声に、顔だけこちらを向ける伊波君。 精一杯、息を吸い込み、思いきって叫ぶ。 「そ、その……お守り、届けてくれてありがと!」 あ、言えた。 やっと私、伊波君にお礼を言えた。 勇気を振り絞って叫ぶ私に、伊波君はいつもの笑顔を見せて、 「ああ、学校で!」 そう手を振りながら伊波君は私の前から走っていった。
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