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「……自信、か」 私はポツリと呟いてゆっくり廊下を歩き始める。 子供の頃から人見知りだった私は、異性と話した経験がなかった。 もちろん恋をしたりドキドキした経験もない。 中学時代は友達もできなくて口数が少ないことからも、ねくら町と周りに揶揄されていたし。 まぁ、それは今でもあまり変わらないかもだけど。 親友の結菜みたいに愛想よくできない私には、自信を持つことがなかなかできないでいた。 でも。 お母さんから"縁結びのお守り"を貰って以来、私の心境は少しずつだけど変化していた。 お母さんの話によれば、そのお守りには神様が宿っていて。 肌身離さず持ち続けていると、好きな人と引き合わせてくれる不思議な力があるらしい。 最初は半信半疑だったけど、縁結びのお守りを持ってから、私は一度だけ伊波君に助けてもらったことがあった。 朝、電車に乗っているところで痴漢に遭い、どうすることもできない私を彼が助けてくれたのだ。 あの日だと思う──私が恋を知り、伊波君を意識し始めたのは。 彼が私を助けてくれたことは、神様の力だったのかもしれない。 けど、それでも伊波君に出逢えて良かったと思っているのは、嘘なんかじゃない。 だから私は今でも大切に──縁結びのお守りを持ち続けている。
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