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校長棟はプライベートな場所。
建物及び部屋には、一般生徒が足を踏み入れることはまずない。
懲罰生徒を除いては……
中に入り障子戸から部屋の中を覗くと、既に梵部医師が意識を失っている校長の脈を測ったり、 今にも消えそうなペンライトで口の中を見ている。
校長の傍に見えるのは血か?
千聖には見えないよう、慎之助はさりげなく前を塞ぐ。
「アーモンド…」
梵部医師が呟く。
「ア、アーモンドの臭いがするんですか?」
葉隠が驚きの声をあげる。
「アーモンドがどないしたん?アーモンド食べとったん?」
花園達に千聖は小声で訊ねる。
「アーモンド臭……そったらこと、ミステリーの定番だ…千聖くん!」
背後から声が聞こえ一同が注目した先に立っていたのは……
推理マニアの生徒会メンバー(自称、絆愛の愛と正義のラブマシーン)、二年生の金田市幸助。
眉間に縄の跡がくっきりみみず腫になって残っている。
「ふんっ!アーモンド臭つったら……青酸系毒物だっぺ」
金田市は自信満々に制服のボタンをいじりながら熱弁する。
「間違いないっぺ。校長は毒殺された!」
「いや生きておるがの?」
梵部医師の言葉に、金田市の熱弁は一瞬止まる。
「それに、校長は…」
梵部医師がそこまで言いかけた時、けたたましいサイレンが鳴った。
「絆愛高等学校救急委員、ただいま参上しました。時間、午前5時03分であります!」
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