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“ゴーン”“ゴーン”……
釣り鐘型の柱時計が、9回鐘の音を響かせた。
「もう9時か。学校はどうなる?平常通りか?」
「校長がおられない以上、教頭に聞くしかないだろう」
「しかし、教頭は今、海外の鉄人マラソンに参加中だ。今年の目標は南極マラソンらしいからな」
もうすぐ米寿を迎える教頭は、今なお現役アスリートなのだ。
「一度先生方と話をした方がいいな。他の生徒は待機させているからどうにでも出来る。引き続き待機なら、各自の部屋で空気椅子をさせておく」
会長はそう言い
「少し、離れる。何かあったら呼んでくれ」
と、葉隠と共に校長棟を出た。
「会長?教師棟はあちらですが」
葉隠が生徒会棟に向かう華月会長に声を掛ける。
「退屈ぅ~。いったん戻ってコーヒーを飲む」
「し、しかし…」
「どうせ、先生達に聞いても空気椅子だよ。校長の信者ばかりだから、オロオロしてるだけ」
生徒会棟に入り扉が閉まると振り返る。
「結局、校長の状態が伝わってこない以上、空論でしかないよ。藍原だってそれはわかっている。わかってないのは、よろず委員長だけ」
葉隠に近づき腰に手を回す。
「あんなとこでゴチャゴチャやってるなら、二人っきりでコーヒーくらい飲みたい」
「今、お茶を飲まれたでしょう?」
「意地悪だよね。わかってて言うんだから……」
会長は体をさらに寄せて密着させる。
「朝陽と二人っきりになりたかった……って最後まで言わせる?」
クスリと笑い葉隠を見上げる。
「会長がサボりですか?」
「“会長”なんて今、まだ呼ぶの?」
「かないませんね……芳薫さま」
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