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「褌は?金の褌は?盗まれたんじゃ…」
「権蔵が着けておったが?探しておったのか?」
所詮、ネタバレすればこんなものだ。
「あの血はいったい?」
「ああ……権蔵が言うには、完封摩擦の後、便所に向かう前にこっそりアーモンドを食べていたらしい」
『いい歳をして、こそこそしよってからに!』と梵部医師は呆れたご様子だ。
「そのまま便所に入り、中の日めくりカレンダーを見たら、日にちを間違えていたと言うんじゃ。昨日見た部屋の日めくりが、1枚よけいにめくられていた」
「はあ…」
「それで今日を“世界豪傑会議”の日と勘違いしておったらしいわ。金の褌は、それで着けておったんじゃろ」
ズズーッとお茶を飲み『ほう…』と息を吐く。
「その時、驚いたことで激しく負荷がかかって切れてしまい、慌てすぎて舌と口内炎を噛みよった。まあ、予想外の出血になったようだが……あとはまあ、倒れこんだ際に顔面を打ち付け鼻血が大量に出てしまった」
梵部医師の話を聞けば聞くほど……
ヒートアップしていた自分達が情けない。
「意識は…」
「CDがどうとか言うておった。台本の確認に追われたとかな。単なる寝不足じゃわい。それで急な睡魔に襲われたんじゃろ……そして運悪く倒れこみ…」
「「「……………」」」
みんな言葉が出ない。
「バカらしい!朝陽、行こう。先生に報告だ。生徒会は解散!ホント、時間の無駄もいいところだよ。変に疲れたし……部屋で休みたい…」
会長は葉隠の手を引く。
「朝陽ぃ、マッサージだけじゃなくさ……続き…ダメ?」
「困った生徒会長ですね」
二人は『先生に伝えて、俺は休憩する』と言い残し出ていった。
「ええなあ……会長」
千聖は羨ましそうに背中を眺めている。
「各自解散!俺は剛脚委員や救急委員を見てくる」
「俺も行く!」
「白鳥、花園。世話をかけたな。他の生徒は直ぐ様授業に参加するように」
出ていく慎之助の声に皆が立ち上がり、わらわらと外へ出ていく。
「儂は昼寝をする。寝不足じゃわい……」
梵部医師も杖をつき、自分の部屋へと帰っていった。
そしてただ一人、茫然と股間を押さえる金田市だけが……残った。
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