第8話 【正臣の秘密】

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「お黙り!私が麻弥ちゃんを貰うのっ!」 先生をキッと睨み付ける杏奈さん。 もしも~しっ! ちょっとあなたたち。「そいつ、俺専属」だの「麻弥ちゃんを貰うの」だの、私は物じゃないっつーの! どう言う感覚?この兄弟は! 彼女の勢いに押されたじたじになりながら、何かの気配を感じてふとそちらに目を向ける。 視線が辿り着いた場所は、廊下に続く扉。その扉は少しだけ開かれており、廊下の手前側のダウンライトが半分見えている。 …あれ?この部屋に入る時、ちゃんと扉閉めたよね?私…。 眉間に深いしわを寄せ、首を傾げて扉をしげしげと見つめる。―――っとその時。 スーッと、その扉が開かれていくのが見えた。 「ヒッ!ぎゃ―――――ぁっ!扉が勝手にっ、扉がぁぁーっ!」 私は恐怖に慄く悲鳴を上げ、杏奈さんの手を振りほどき、飛び上がるようにしてソファーに体を貼りつけた。 「は?扉?」 先生と杏奈さんは尋常じゃない私の姿を見た後、落ち着いた様子で二人同時に扉に視線を向けた。 何がいるの?!だって、何かが見えた。 扉の隙間からこっちを覗く、何かが見えたんだからっ! 恐怖心MAXに達した私は青ざめた顔で、藁をも掴む思いでソファーのシーツを掴み、身を縮こませる。 「なんだ~。咲菜か。やっと起きたのね」 杏奈さんの柔らかな声が耳に流れ込んで来た。 …ん?…咲菜(さな)?――――誰ですか?それ。 私は大きな瞬きを繰り返し、ゆっくりと伏せていた顔を上げる。
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