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「えっ!?言葉が話せないって…」…どうして?
大きく開いた目が、問いを投げかける。
「年齢は5歳だが、知能は3歳くらい。IQは65に達していない…、咲菜は、広汎性発達障害なんだ」
先生は落ち着いた口調でそう言うと、ちょこんと横に座っている少女の肩にそっと手を乗せた。
「…広汎性発達障害?」―――初めて聞いたその言葉。
知能が遅れる発達障害…発達遅延とかいうものの一種?
首を傾げて、言葉を詰まらせる。
「…詳しい事は、後で話す」
先生は私に目配せをして、咲菜ちゃんの頭を撫でた。
あっ、そうか…咲菜ちゃんの前だから…
「はい、後で…」
思わず塞ぐように口に右手を当て、しおらしく返事をする。
「正臣…私、咲菜をお風呂に入れて寝かせるわね。明日もあるし」
新しく入れ直した紅茶と、咲菜ちゃんが飲んでいたコップをテーブルに置いて、杏奈さんが少女を抱き上げた。
「お姉ちゃんに、おやすみなさいをするのよ」
杏奈さんはそう言って、咲菜ちゃんの手を持って「バイバイ」をする。
咲菜ちゃんはチラリと一瞬私を見た後、
「パパ…ばいばい」…小さな声で言って、先生を見つめていた。
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