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「咲菜の診断名は、自閉症。先天的な脳の機能不全による障害で、言語とコミュニケーション能力において発達に遅れが見られている」
「自閉症!?…ってあの…」…じっとできなくて、授業中もウロウロ歩き回るとか…そんな内容をドキュメンタリー番組でやってた!…気がする。
でも、咲菜ちゃんは落ち着きが無いようには見えなかった。
自閉症でも、それぞれ違うの?
「…あの、自閉症ってよく分からなくて…。アスペルガー症候群も含めて、今の時代たくさんの子供がそう診断されてるって聞いた事はあるんですけど…すみません。無知で」
しどろもどろに言葉を繋げ、しおらしく頭を下げた。
「麻弥は子育てしてる母親でも、保育士でも無いんだ。謝る必要はない。
周囲の子供と比べて発達の偏りがあるだけで、過程はゆっくりだがその子の速度で必ず成長していく。…いや、周囲と比べる必要も無い。身体年齢も考えなくて良い。
咲菜を純真無垢な3歳の子供だと思って、麻弥が院内の子供たちに見せる自然な姿で接してくれれば、それで良いんだ」
不安を隠せないでいる私に、彼は優しく語るようにそう言って、私の瞳を真っ直ぐに見つめる。
「純真無垢な3歳の子供だと思って…」
「そうだ。あの子と一緒にいれば、俺の言葉が解るはず。契約の件、今すぐに返事をくれとは言わない。そうだな…お試し期間後に返事をする…って言うのでどうだ?」
会話の途中で少し間を空けた後、彼は表情を緩めた。
「へっ?…家政婦のお試し期間ってこと?!」――家電製品でも、美容器具でもサプリメントやコスメ商品でもあるまいし!
「たった今、決めた。明日からここで一緒に暮らそう」
『珈琲でも飲みに行こう』と言うくらいのノリで、彼の口からさらりと落ちた言葉。
なるほど、お試し期間に一緒に暮らすねぇ。……っ?!
「ええぇぇ―――――っ?!」
解析困難な文字の襲撃によって、3秒遅れた私の反応。
たった今決めたって、あんた突然なに言い出すの?!
「一緒に暮らすって、ここに?私がぁ?!」
目の玉が飛び出してしまいそうなくらいに瞼を開き、頭のてっぺんから裏返った声を上げる。
「大丈夫だ。空いてる部屋はある。お試し期間は1週間。どうだ?我ながら、ナイスアイデアだろ?」
先生は得意げにそう言って、にっこりと満面の笑みを放った。
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