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「あっ、紅茶より珈琲のが好き?」
「いえ、紅茶大好きです」
「そう、良かった。私も紅茶が好きで種類は揃えてあるのよ。ストレートなら、ダージリン、ディンブラ、ルフナ、カンニャム、アッサム。フレイバーならアールグレイ、バイカル、フランボワーズ、アップル。ブレンドならアフタヌーン、オレンジペコー、イングリッシュブレックファースト。どれがイイ?」
お姉さんは流暢な発音でそう言って、ニッコリと笑う。
…えっ!?
今の、全部紅茶の種類!?
なんて綺麗な英語の発音。舌の巻き具合が本格的。
アメリカから帰国って、旅行じゃなくて長く在住してたってこと?
滑らか過ぎて聞き取れませんが...
ダージリン…アッサム…アップル…オレンジペコー…あと、何だって?
ストレートとフレイバーとブレンドの違いも分からないんですけど…何が違うの?
紅茶大好きと言いながら、よく耳にする定番の種類の美味しさの違いさえも分からない。
こんなに種類を言ってくれたのに、ダージリンなんて言ったらつまらないって思われちゃうかな…
「…あの、紅茶の種類よく分からないのでお姉さんのお薦めでお願いします」
考えた末に、恥ずかしそうにそう言葉を返した。
「 私のお薦めはカンニャム。ネパール産の茶葉なんだけど、出荷数が少ないから専門店でしか手に入らないの。味はダージリンに似てるから飲みやすいと思うわ」
「ええっ!?出荷数が少ないって、そんな貴重な茶葉を私なんかが頂くなんて勿体無い!」
調子に乗って「お姉さんのお薦めで」なんて言ってしまったけれど、
「普通のダージリンでお願いします!」
広げた二つの手のひらを振って、慌てて前言撤回をする。
「何が勿体無いのよ。面白い子ねっ。正臣ー、麻弥ちゃんと私にカンニャムよろしくー」
「ああ、了解」
「了解って、...エエーッ!!まさか、先生が紅茶を?!」
いつの間にかキッチンに立ち、食器棚からティーカップを取り出している先生を凝視しながら出た声が、思わずひっくり返った。
「勿論、正臣が入れるのよ。だって、ここは正臣の家。あなたは正臣のお客様。そして何より、私に家事は似合わない。でしょ?」
お姉さんは「うふふっ」と可愛いらしくも無敵感いっぱいの笑みを浮かべる。
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