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「ここら一帯はまさに陸の孤島。以前は盗賊の格好の標的で、なお且つ、そういう輩の溜まり場だった。国としては悩みの種だな。この戦争の時世、こんな辺境に無駄に戦力を割きたくはないが、野放しにはできず、中途半端な戦力を送るわけにもいかない」
その点、ギルバートはおあつらえ向きである。
不安要素を抱えた爆弾を、国の膝元から離しつつも最大限活用する――実に合理的。
しかし、爆裂の被害を被るのは町民だ。飲食店で目にしたように、町は実質的にギルバートに支配されている。
「名目上は自分たちを護ってくれる救世主、さらに自分たちでは束になっても敵わない存在。町民たちは逆らいたくても逆らえない。奴が救世主でなく、寄生虫だとわかっていても」
「――だから、ユティス様がやるんですよね?」
屈託のない表情を浮かべて、アカリが訊く。
「ああ。僕が奴を狩る」
刃物のような双眸を見開き、ユティスは噴水の向こう、魔導師団の部隊が駐屯する基地に目を向けた。
半年前。ギルバートを筆頭にした部隊が、町に派遣されてきた日のこと。
町の片隅のバーで、ギルバートは暴虐の限りを尽くしていた。
「頼む……もう、やめてくれ――!」
許しを請う男の腕を握り潰し、ついでに魔力を注ぐ。腕は木端微塵に吹き飛び、男はショックで失神した。
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