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その隙を突いて、背後から別の男がサーベルを振り下ろした。刃はギルバートの肩口に当たったが、ほとんど食い込まず、弾かれる。驚愕と恐怖に染まった男の顔面を、ギルバートの鉄拳が叩き割った。
ギルバートの周りには、武器を持った男たちがまだ十人近くいる。
だが、目の前の軍人一人によって仲間の半数以上を失ったせいで、全員が戦意喪失に近い状態だ。
そんな相手の心情はお構いなしに、ギルバートは暴れ続けた。
一方的に蹂躙される男たちの正体は、この町を根城にした盗賊団のひとつ。
盗賊の排除及び町の警護のために派遣されたギルバートは、到着したその日のうちに、盗賊のアジトとして利用されるバーに押し入った。しかも単身で。
いくら部隊の指揮官とは言え、普通なら他の兵が彼の独断専行を許すはずもない。しかし実際、誰も止めることはなかった。――ギルバートが旅路の途中で、既に部隊を自分の言いなりにしたから。
もちろん、自身の誇る圧倒的な力を以て。
「頭にくるぜ! あのクソジジイ共がっ!」
盗賊の最後の一人を蹴散らした後、ギルバートは同じバーで酒を飲んでいた。
バーテンダーも店員もいないので、酒は店の棚から適当に奪った。
どうしていないのか、答えは単純。床に転がる瀕死の盗賊たちに混じっている。
バー自体は町民の経営する真っ当な店なのだが、ギルバートはついうっかり、彼らまで叩きのめしてしまったのだ。
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