1.嵐が止んだ夜

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 辿り着いた結論に対し、ありえないと否定する。  魔力抵抗抜群の建物丸ごとに魔術をかける――例えるなら、手榴弾の炸裂をしゃぼん玉で包もうとするようなものだ。魔術の常識を外れている。  とりあえず、これ以上考えても埒が明かないということを、ギルバートは理解した。 「面倒臭え。てめえを半殺しにして訊いた方が早いな」 「そうか」  次の瞬間、ユティスが超人的な速度で踏み込んできた。壁を崩した斬撃を放つ。  当然受ければ致命傷だが、ギルバートも歴戦の軍人に違いない。手にはもう得物を構えている。  壁に立てかけていた、三日月形の斧部を持つハルバード。使い手に似合わず、芸術性を備えた洗練されたデザインが美しい。  剣とハルバードが激しくぶつかり、火花を散らした。  重い。ギルバートは率直に感じた。  魔術で肉体を強化しているのか、ユティスの細身な体躯からは想像しがたい一撃だ。 「ガキのくせに、やるじゃねえの」   「その戦斧、喪失の秘術か」 「へえ、目も利くのか。ますます何者か気になるぜ」  練った魔力をハルバードに流す。ギルバートの筋力ではなく、あくまでハルバード自体が発する力が増し、剣を押し返していく。  ギルバートは剣をへし折るつもりだったが、ユティスが軽く飛び退く。それで威力は殺されてしまった。
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