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それだけでもうアカリは生き生きする。嬉しそうに「はい!」と返事をし、引かれるままついていく。
「待ちな、嬢ちゃん」
ギルバートの隣を通り過ぎる瞬間、アカリは肩を掴まれ、引き止められた。
ギルバートはアカリをまじまじと見つめて、薄く笑う。
「ガキかと思ったが、なかなかの上物じゃねえか。澄まし顔の弱腰野郎は見限って、俺と遊ばねえか?」
正気を疑う発言。軍人が、真昼間から、公衆の面前で吐く台詞ではない。
だが、やはり誰も何も反応を示さず。店員も客も我関せずのスタンスを貫く。もはや、ユティスとも視線を合わそうとしない。
彼らがギルバートを恐れていることは、火を見るより明らかだった。
「う……ちょっと、離してください」
「そう嫌がるなよ。金ならあるし、何よりここは俺の町だ。付き合ってくれんなら、何でも好きなものをやるぜ?」
「……何でも、ですか?」
「ああ。服でも宝石でも、欲しいもんを言いな」
顎に手を添え、考える仕草をする。
ややあって、アカリは満面の笑みで言った。
「じゃあ、ユティス様の心をください」
水を打ったような静寂。店内に緊張が走る。
アカリに悪意はないのだろうが、当然ギルバートの逆鱗に触れた。額に青筋が立ち、殺気と魔力がほとばしる。
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