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昼になり、社長室にも強い日差しが入りだす。
それくらいに、ようやく撮影が終わり、取材陣が帰っていった。
女性「では失礼しました?」
岡野「ありがとうございました」
見送りをして、お辞儀をして振り返ると、喜多嶋社長が肩をまわしている。
ふーっとわずかにタイを緩めた。
喜多嶋「格好をつけたままというのも疲れるな」
岡野「作ってるんですか?」
喜多嶋「取材でちやほやされて、浮かれてるとでも思ったのか?」
岡野「さまになってるから……」
喜多嶋「ふっ。見惚れてくれてたわけだ」
わざとのようにきざな仕草で肩をすくめられる。
岡野「あっ!」
指摘されて、真っ赤になった。
喜多嶋「俺は相手が喜ぶことをしてやってるだけだ。まあ、こうやって見世物パンダになるのも社長の仕事のうちだろ」
淡々と言われ、目を見張る。
岡野「やっぱり、喜多嶋社長は、すごいですね」
すっかり感心して、僕は社長を眺めた。
岡野(この人の下で働けるって、かなりラッキーかも……)
喜多嶋「ヒロ、この後も取材か?」
岡野「はい」
喜多嶋「確か、今度は相手が指定したニューオープンのカフェだったな」
岡野「そ、そうです。港町の……空中庭園があるそうで、そこが絵になるからって……」
僕はあわててモバイルでスケジュールを確認する。
喜多嶋「じゃあ、今から出るぞ」
岡野「え、でも、まだ時間が」
喜多嶋「近くに、今うちがプロデュースしている複合商業施設があったはずだ。そこに寄る。ほら、行くぞ」
岡野「はいっ」
すぐに、喜多嶋社長の後についていった。
とにかく、コバンザメみたいにくっついて離れないことが、この社長秘書にとっては必須とわかってきている。
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