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岡野(って、オフィスでは、かなり尊敬したのに、どうして家に帰ると、この人ってだらしないんだろう)
マンションに帰るなり、ぽいっと脱ぎ捨てたジャケットを拾いながら文句を言う。
もう勤め始めて数日が経っていた??。
岡野「喜多嶋社長、そばに僕がいるんだから、脱いだら投げずに渡してください」
喜多嶋「ん?」
今、気づいたというように顔を向けられる。
喜多嶋「腹が減ったな」
岡野「今、僕の顔を見て条件反射で言ったでしょ、それ」
喜多嶋「いいだろ?どうも、ヒロの料理に胃が飼いならされてるようなんだ。お前、本当に料理がうまいな」
岡野「そ、それは……結構早くから、自炊してたから……」
(両親が早く死んだせいで……)
ふっと表情を曇らせると、喜多嶋社長が、ぐしゃぐしゃっと頭を撫でてくる。
岡野「もうっ」
喜多嶋「立派な能力だ。少なくとも、お前の料理を食べるようになってから、俺は体の調子がすこぶるいいぞ」
岡野「ど、どうも……」
喜多嶋「あとは、その小舅のような口うるささが、もう少しおさまるといいがな」
にやっと笑われて、どきっとした。
岡野「嫌いですか?」
恐る恐る聞くと、ふわっと微笑まれる。
喜多嶋「な、わけないだろ?俺に嫌われると思ったのか?」
岡野「だって……」
喜多嶋「たわごとだ。気にするな」
くしゃっと頭を撫でられた。
岡野(もう、すっかり、これが癖になってる…)
喜多嶋「片付けは、前向きに善処する」
岡野(きっと、注意しても変わらないな……いいけど……)
すっかり甘やかす気持ちになっている。
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