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第1話
岸さんに一通りオフィス内を案内してもらって、社長室へと入る。
岸さんは社長の右腕と呼ばれ、きりりとした眼鏡の顔が細身のスーツに映える人だ。
岡野「失礼します」
部屋に入ると、もうひとり背のやたらと高く、肩幅の広い人が社長と話している。
鷲見「へえ、新人か?」
バックルのあるスクエアトゥの靴を履くその男は、不敵な笑みを浮かべた。
長髪をしなやかに流して、野獣のような瞳がぎらりと強い光を宿していた。
きっちりとスーツを着てはいるが、いつそれを蹴り破って本性を現すかと思うようなワイルドさも感じる。
岸「そうですよ。鷲見社長、あまりからかわないようにしてくださいね」
鷲見「相変わらず、美人さんは手厳しいな」
岡野(美人さんって、岸さんのこと?そりゃあ、美人さんだけど……)
岸「彼は、リーラルの鷲見社長。うちとはライバル会社といってもいいんだが、昔から社長とは仲がいい」
鷲見「そうそう。むしろ、協力会社だな」
岸「といえなくも、ありません」
鷲見「で、次の仕事にも協力して欲しんだけどな」
喜多嶋「岸、よろしく頼む」
岸「わかりました。それでは、会議室へ」
鷲見「ああ」
岸さんが鷲見社長を、先に部屋から出し、そっと僕の方へ耳打ちしてくる。
岸「それじゃあ、社長のお守はまかせたから」
岡野「へ?」
岸「それから、鷲見社長はバイだから、気をつけて」
岡野「えっ!」
(バイって、男でも女でも恋愛対象はかまわないってタイプの人だよね……え?)
岡野「あの、それどういう……」
聞き返すけれど、岸さんはさっさと仕事に戻っていった。
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