誇れ、雷鳥

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意表をつかれた兵士はひっくり返り、ドグはその隙に脱出。降り下ろされた剣は空を切った。 「ルゥ!?お前……!」 「貴様も、貴族を愚弄するかぁ!」 ドグの驚愕の声よりもルゥは貴族の怒声に反応した。 身体の芯に染み付いた恐怖がそれを目の前にして蘇ってきた。 ルゥは思わず尻餅をつく。緊張で奥歯がカチカチと音をたてた。 「いや、あのですね。決して逆らおうとかそういうことではなくて」 「ならば何故今邪魔をした!」 「そ、そうですよね。あ、あっれー?何で僕こんなことしてんだろう?」 「こっちが聞きたいわ!」 地面に突き刺さる剣。ルゥは恐怖で失禁した。 「ルゥ!逃げろ!」 「ルゥくん、逃げて!」 二人の声がルゥの耳に届く。その瞬間、ルゥの気持ちが透いた。 「人から死なないでくれって言われるのが、こんなに嬉しいなんて、知らなかったよ……」 「何をごちゃごちゃと……まぁ、いい。まずは貴様から―」 貴族が剣を振り上げ― 「僕、最期で変われたかな?そうだったら、嬉しいな……」 「死ね!」 降り下ろした。
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